定番?のヤブ漕ぎの末に… 百間岳・黒鉄山(2002.2.24)


  
P・@〜C
P・@〜C

地元の人すら知らない遊歩道?

春を思わせる陽気が続く今日この頃。今回は,同行のS田さんが入手した極秘情報を元にwithMTBです。山域は赤穂市です。黒鉄山の近くに,最近,遊歩道が整備され,下りで極楽ダウンヒルが楽しめるとのことです。これは要チェックです。早速オジャマすることにしました。

R2から長谷川沿いに横山に向かいます。このあたりも赤穂市ということですが,「市」という感じはありません。のどかです。横山の集落に着き,大避神社脇の空き地(P)に車をとめます。この大避神社は,宝珠山のふもとの大避神社とは関係があるでしょうか。MTBの準備を終え,出発です。

どこへ行くのかすらわからない登山口

山沿いのダブルトラックを進みます。さびついた重機のある分岐を右折。谷に向かいます。きれいな林道はまだまだ続きます。路面の落ち葉とまわりの雑木林が,イイ感じです。大避神社から10分ほどで「登山口」です。小さな木のプレートに「登山口」の表示があります。が,この登山口が,どこの山に登る登山口なのかがわかりません。これだけを見て,この登山道を登る人はいないでしょう。さすがに,「地元の人も知らない」登山道です。林道はここで終点です。

木を何本も渡しただけの橋を渡り,登山道へ。早速,MTB担ぎの始まりです。それまでの林道とは違い,岩の多いガレ気味の山道です。しかも谷道なので,日は当たらず,湿っぽく,薄暗い道です。あまり快適とはいえません。水のない沢をいく度となく横切り,登っていきます。が,途中で,その沢がかつては林道だったことが判明。林道も荒れに荒れると,岩だらけの沢になったしまうのですねぇ。

登り始めて15分。「二合目」のプレートにある付近は,階段があったり,石垣があったりと,大規模な人工物があります。山の斜面には,洞窟まであります。かつては,この付近で人びとがなんらかの仕事に従事していたのでしょう。あまりの山奥であることと平地がないということで,農業とは考えにくい。おそらく,鉱業でしょう。近くの黒鉄山という山名からも,鉄鉱石が採れたのかもしれませんが,こんな小規模な鉱山で鉄鉱石はないでしょう。もしかすると,貴金属類を採っていたのかもしれません。

  
ナゾの石垣 9合目の尾根道
ナゾの石垣
9合目の尾根道

さらに登りは続きます。岩の多い歩きにくい道です。もちろん,MTBは担ぎっぱなしです。でも,道の脇の木は切り払われているので,MTBを担いでも枝が絡みつかないだけマシです。あいかわらず,暗く湿っぽい谷道です。あたりの気温は低いはずですが,汗びっしょりです。メガネも汗で曇りっぱなしです。登り始めて30分ほどたった頃,山道の傾斜はゆるやかになり,やっと尾根に出ました。

ナゾの「山頂」へ

尾根には,左右に明確な道がついています。ここが9合目(@)です。「山頂」は,右手に登るのでしょう。木立の間からは,瀬戸内海が見えています。山頂からの展望が楽しみです。斜面を横切りながら山頂に近づきます。そして,山頂(A)。ところが,「山頂」のプレートはありますが,山名がありません。なんともヘンな表示です。登山口にも山名がなく,山頂に山名がない。いったい,我々が登った山のお名前,なんてえの?

「山頂」からの展望は,期待通りです。春がすみで遠望がきかないのが残念です。北には西播磨の山々が連なっています。南には,日生の海がかすかに見えています。有名な山々を見渡す大パノラマというわけではありませんが,低山のうねりが見事です。展望を楽しんだ後で地形図を見ると,黒鉄山はすぐ近くです。では,チョット寄り道をしてみましょう。ところが,いつものことですが,この「ちょっと」というのが曲者です。

地形図を見て,西に下りますが,道らしいものがありません。それでも強引に下っていると,正面にあるはずの黒鉄山が見当たりません。???です。地形図を見直すと,現在地の特定が間違っています。我々がいたのは,435のピークです。思ったよりも,黒鉄山は離れています。しかも,「山頂」からは,南に下らなければなりません。ありゃりゃ。「山頂」に戻り,南に下る道を探すものの,明瞭な踏み跡はありません。はるか前方には,黒鉄山が見えています。「山頂」から黒鉄山の間には,ピークが2つあります。道さえあれば,黒鉄山へ行くのは,さほど大変ではないでしょう。

ついつい,黒鉄山へ

瀬戸内沿岸特有の劣悪な土壌に少ない雨のためか,大木はなく,背丈の低い木々がまばらに生えています。その根元には,シダがビッシリと生えています。踏み跡らしいものはないものの,強引に進むことができます。踏み跡が見つからなかったので,黒鉄山への縦走はあきらめていたのですが,いつの間にか「山頂」からずいぶん下ってしまっています。と,幸か不幸か,明瞭な踏み跡を発見。これで黒鉄山に行けそうです。

  
「山頂」 黒鉄山を眺める
「山頂」
黒鉄山を眺める

鞍部からは踏み跡は,左右に分かれています。左はピークを巻いているように思えますが,すぐにヤブっぽくなっているようなので,右に進みます。ところが,結果的には,この選択の誤りが,これからの悲劇の原因になってしまったのです。右に進むと,しばらくして踏み跡は不明瞭になってしまいました。それでも,ピークを目指して,ヤブっぽい林の中を強引に突き進みます。なんだか,イヤ〜な予感。岩場を登り,ピークに近づきます。

そして,いつものように?ヤブ漕ぎへ

岩場のピークらしい所から見ると,黒鉄山へはあとひとつピークを越えなければなりません。何とかなるかなぁと気楽なものです。ところが,ピークからの踏み跡がまったく見つかりません。行く手は,完全なヤブです。しかたおまへん。ヤブ漕ぎに突入です。いつものことながら,なんでこうなるの!?MTBを「山頂」に置いてきたので,いつものヤブ漕ぎよりはマシ?それにしても,「山頂」から遊歩道を素直に下れば,こんなヤブ漕ぎはしなくてもよかったのに,ついつい黒鉄山が気になっただけで,結局はいつものパターンになってしまいました。

それでも,ヤブは低いので,尾根をはずすことはありません。できるだけ尾根の中央を進み,あわよくば踏み跡を発見しようという魂胆ですが,なかなかそううまくはいきません。バキッバキッ,バリッバリッ,ガサガサ。何がなんだか,ここがどこだか,わけワカメです。イテテテテェ〜!シダだけでなく,イバラも完備です。S田さんのヤブ好きには,ほとほと困ってしまいます。

鞍部に下りる手前で,踏み跡を発見。かすかな踏み跡ですが,先ほどのヤブ漕ぎと比べて,格段に歩きやすい。うれしくなってしまいます。せっかく見つけた踏み跡を見逃さないように進みます。踏み跡は,尾根の中央ではなく,わずかに外れてついています。見つからなかったはずです。鞍部からも踏み跡は続いています。ところが,踏み跡は尾根から外れたり,2つに分かれたり,なくなったりと,非常にわかりづらくなっています。しかたがないので,我々は尾根の中央を意識しながら進みます。いつの間にか,再びヤブ漕ぎになってしまい,もう大変。

二つ目のピークに登ると,目の前に黒鉄山が見えます。山頂の反射板も見えます。その右手には,赤穂の街がかすんでいます。その向こうには,播磨灘に浮かぶ家島諸島が見えています。黒鉄山の展望が楽しみです。再びヤブ漕ぎを強いられますが,先ほどのヤブと比べるとまだマシです。木々の間を抜け,ピークを下ります。と,踏み跡に再会。あるかないかの踏み跡ですが,ヤブ漕ぎに比べると,ずいぶんマシです。鞍部に抜けると,踏み跡があちこちにあります。さっきから,踏み跡にはジュースかんが転がっていたり,そのまわりの木にオロナミンCがつきたててあったりするので,知る人にとってはなんということのないルートなのかもしれません。こんなルートでヤブ漕ぎをする我々を見たら,笑止千万な話だったかもしれません。

ようやく黒鉄山へ,ところが…

再び,踏み跡に再開した我々は,意気揚揚と黒鉄山目指して登ります。あるかないかの踏み跡を確かめながら,山頂を目指します。そしてついに黒鉄山山頂(B)へ。先ほどの「山頂」から1時間あまりの縦走でした。地形図では,それほど距離はないのですが,度重なるヤブ漕ぎにずいぶん時間がかかってしまいました。でも,先ほどの「山頂」からは下るだけなので,これぐらいの寄り道がいいのかもしれません。

  
黒鉄山山頂 黒鉄山から赤穂の街を眺める
黒鉄山山頂
黒鉄山から赤穂の街を眺める

山頂には,二等三角点(点名西有年 430.9)があります。まわりは木立に囲まれ,展望がありません。少し下ると,鉄板でできたベンチのようなものがあります。その上に立つと,赤穂の街や播磨灘を見渡すことができます。黒鉄山は赤穂の山であることが,実感できます。もう少し下るものの,それ以上の展望は期待できないので,先ほどの鉄板ベンチでランチにすることにします。

ところが,このランチタイムで一大事が発覚。S田さんのリュックにはさんでいたベストがなくなっています。探すったって,あのヤブの中で落としたのでは,絶望的です。すっかり意気消沈したS田さんは,鍋焼きうどんに火をつけています。今日は冷凍品ではないのですが,だしをお湯で薄めなければなりません。鍋焼きうどんたって,いろいろな種類があるものなんですねぇ。

S田さんはいつものように無線で交信をしています。その情報によると,植松山は雪,丹波は雨ということです。曇りがちですが,太陽が顔を出しているのは,瀬戸内側だけのようです。今日の黒鉄山は正解だったようです。でも,その明るい太陽と対照的に,ブルーが入っているのがベストを落としたS田さんです。心なしか,好物の鍋焼きうどんをすするS田さんの後ろ姿がさみしげです。

行きは大変,帰りは楽チン

食後のコーヒーをいただき,「山頂」へ戻ります。来た道なので,少しは楽です。踏み跡をたどっていくと,枝に新しい切り口がついています。最近,踏み跡をたどって「山頂」へ縦走した人がいるようです。赤布がついていないので,O柿さんではないことは,確かです。我々は,その切り口をたどりながら,縦走をします。鞍部の踏み跡分岐点に到着。ここからも,踏み跡を確かめながら,正面のピークを目指します。来る時には,難渋したヤブを左手に見ながら,踏み跡をたどり,なんなくピークに到着。と,前方に緑色の物体を発見。見ると,S田さんの落としたベストです。奇跡としか言いようがありません。でも,S田さんは,これで当面の運を使い果たしたかもしれません。

ピーク近くの岩場に登ると,これがすばらしい!の一言です。播磨灘はもちろん,小豆島や日生も見えます。北の山々は,春がすみはすっかり消え,きれいな姿を見せています。黒鉄山の山頂よりもいい展望です。これは穴場です。展望を楽しんだあとは,縦走の再開です。見ると,踏み跡は尾根からはずれています。これでは見つからないはずです。枝の切り口を頼りに,踏み跡をたどります。次のピークは,東にまきながら「山頂」に続いています。あれだけ悪戦苦闘したヤブを左に,すいすい歩けます。あのヤブ漕ぎはなんだったのでしょうか。嗚呼,無情。

「山頂」への最後の登りですが,踏み跡は,「山頂」をも巻いています。これではいけません。東側から木立の間を抜けて「山頂」(A)へ。無事,帰還です。乗り捨てていたMTBも無事です。メデタシ,メデタシ。黒鉄山山頂から1時間足らず。行きと帰りでは,時間的には大きな違いはありませんが,労力という点では大違いです。でも,これぐらいの苦労をした方が,山に登った甲斐があるというものかな。

変化に富んだ極細STダウンヒル

待望の下りです。「山頂」直下は,MTBには乗れそうで乗れません。それでも,しばらく下ると,快適な尾根道になります。「9合目」(@)を過ぎ,山道は細くなってきます。極細シングルトラックです。その極細の路面には,岩や切り株があちこちにあります。しかも,右側が急斜面なので,ちょっとこわい。

下り始めて10分。道は尾根道になり,崩落地の上を通ります。この崩落地は,「山頂」からも見えましたが,かなりのスリルポイントです。MTBで下っている本人はそれほど感じず,見ている者の方が崩落地も見えるのでよけいにスリルを感じます。尾根道はさらに続きます。今度は,左が急斜面の極細STです。右が斜面なら,左を足を出しながら走れますが,左が斜面だと慣れない右足を出すという格好なので,よけいに恐怖を感じます。それでも,尾根に近いのでまわりの山々の展望を楽しみながら下ります。極細STのまわりはシダがおおっていますが,枯れています。遊歩道を整備した時に,除草剤で枯らしてしまったのでしょう。この遊歩道にも,「○号目」の木のプレートがあります。

  
崩落地の上を走る 有年大池
崩落地の上を走る
有年大池

谷への急坂を下ると,谷道になります。しばらくは,MTBに乗車不能。ガレガレ,倒木の山道です。ようやく,MTBに乗車可能になるものの,先ほどの尾根道ほど快適ではありません。押したり,乗ったりで山道を下り,「登山口」(C)へ。ここにも,どこの山に登る「登山口」かは,書かれていません。「山頂」から50分ほどの下りでした。

百間岳!

「登山口」からは,南北に山道がついていますが,我々が行くのは,もちろん,北への道です。しばらく進むと,「百間滝」が現れます。滝というほどの迫力はありません。このあたりから遊歩道らしい道になっています。あとは,この遊歩道を進むだけです。ところが,この遊歩道がおもしろい。小川を何度も渡るのです。浅いのでMTBで乗ったまま渡ることができます。でも,川底は岩だらけなので,ちょっとヤバイ。S田さんは強引にわたっています。こういう岩場は苦手なボクは,恐る恐る渡ります。途中で,「ナメラ谷 横山池 石ヶ樋・百間岳」の標識を発見。我々が登った435のピークは,「百間岳」という名前だったようです。それならそうと,登山口に書いてくれればよかったのにねぇ。

この百間岳を周回するコースは,赤穂市が計画している「赤穂河鹿の森」の一部のようです。まだまだ整備し始めたところという感じのするコースでしたが,それだけにハイカーに出会うこともなく,MTBを楽しむことができました。整備し終えた時に,黒鉄山への縦走コースももっと整備されるのでしょうか。今後の整備に,期待半分,不安半分です。今回のコースも,いつものことながら,ヤブ漕ぎあり,スリル満点ポイントあり,展望ポイントありのシンド楽しいコースでした。これぐらいの山歩きwithMTBがちょうどいいかもね。


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