新緑と大パノラマの行者山・大甲山・荒尾山・植松山縦走(2002.5.25)


  
P・@〜E
P・@〜E

今週こそは植松山

先週の悪天と大違いの快晴です。青い空と新緑のコントラストがきれいでしょう。そんな期待をいだきながら,加古川を出発。同行のS田さんは,昨夜の夜遊びで寝不足気味です。まずは,植松山の登山口を目指します。波賀町からトリガタワを越え,千種町に入ります。右手には,これから行くであろう大甲山や植松山が見えています。

山麓の住人との交わりも絶えて久しく,まして登山者から見逃されている無名の山。文字通り清浄無垢の境地は,処女的な,野性的な感覚で,終始私の心を興奮させた。さらに,懐しい山々をちがった角度から見せる新鮮な頂上展望―。山上のひとときは,まるで天上に立つおもいだった。
無名の山,大甲山こそこのままの清浄なすがたを伝えねばならない。長く,そして永遠に。

             (『兵庫の山やま 総集編』多田繁次)

私は千種の山の中でも日名倉山へは再々足を運んだ。その都度頂上に立って,千種川対岸にどっしりと腰を据えた巨大な山塊を眺めては胸の血を湧かせた。それが植松山だった。当時の地図によると,三角点の標高は1191mで,山名も登路の記入もなかった。連綿とした頂稜にもたげる5つのピークから派生する山脚は,その三方を千種川と支流の岩野辺川,荒尾の谷へと張り出し,北稜はかんかけ越えを経て三室山へと連なる。その山容の大きさは,おそらく氷ノ山に次ぐものではないだろうか。  (前掲書)

岩野辺からは,標識に従い,林道に入ります。植松山は兵庫50山に選定されおり,登山道や標識が整備されたそうです。車1台分の林道を登ると,広場になり終点。ここからは山道で植松山に登るようです。ですが,今日の我々は,ここから植松山に登るわけではありません。車に積んできたMTBを使って,波賀町に行き,そこから歩きで植松山へ縦走しようという算段です。

寝不足のS田さんは,「あの峠を登るだけで倒れそう」と,早速,泣きが入っています。もちろん,これはいつものことなので無視。そもそも,このルートの言い出しっぺは,S田さん本人です。ボクもこのルートがいいなぁと思ってはいたものの,このエリアは未体験なので,???でした。

舗装路をMTBで

MTBで林道を下り,R429へ。いよいよトリガタワへの登りです。途中には,「古代製鉄の神 金屋子神 臨幸の地 岩鍋」の石碑があります。また,このトリガタワをトンネルで抜ける工事も始まっています。峠越えとはいえ,千種側からの登りはゆるく,さほど距離もありません。MTBでのんびりサイクリングです。峠には,石のモニュメントがいくつかあります。その台には,トリガタワの由来が書かれています。

トリガタワの由来

その昔,千種町岩野辺と波賀町斉木との境界の峠に観音様をお祀りしたお堂があり,両町から村人が参っておりましたが,ある日,双方の村人がお互いに自分の村にこの観音様を持ち帰りお祀りしたいといいだし,この峠で話し合ったがどちらも譲らず夕方になっても決着がつかないので古老の提案で,明日の朝一番,鶏の声を合図に村を出て早くここに来たほうが連れて帰ることで話し合いがつき,夕闇の中,それぞれ村に帰っていきました。岩野辺の人々が山をおり高橋の所まで帰ったとき,急にあたりが夜明けのように明るくなり大石の上で黄金の鶏が目前の現れ大きく羽撃き,「コケコーロー」と天に向かって鳴いたので村人は大変不思議なことが起こったと驚き,これは,観音様が岩野辺に来たいというお告げに違いないと,早速引き返して観音様を大切に持ち帰りお祀りしたそうです。
これが現在,岩野辺福海寺の本尊だと言われており,その頃からこの峠を「トリガタワ」と呼ぶようになったそうです。

トリガタワからは,波賀町上野までの長い下りが始まります。途中に,寺跡がありますが,どこがどこやら?です。再び,MTBで下ります。峠を下りきるところで,波賀町側のトンネル工事現場があります。トンネル完成は,まだまだ先のようです。下りは続きます。結局,トリガタワからはペダルを回すこともなく上野に到着。R29からは飯見に向かいます。飯見には,MTB登山の大御所O柿さんの実家があり,そこにMTBを置かせてもらうことになっているのです。

  
トリガタワの石のモニュメント 行者岩
トリガタワの石のモニュメント
行者岩

行者岩へ

O柿さんちはお留守のようでしたが,お隣の家(P)の方の好意でMTBを置かせてもらい,行者山へ。飯見地区の墓地を過ぎ,植林に入ります。すぐに野獣除けの柵が現れます。さらに進むと,今度は鹿除けネットです。一旦は,ネットの向こうに行きましたが,道がないので引き返し,植林を登ることにします。植林の中の急な登りは,なかなかキツイ。汗が一気にふき出します。

植林を登り,鹿除けネットが見えなくなると,踏み跡がわかりにくくなっています。今度は,ピンクのテープを目印に登ります。行者堂に向かっているハズなのですが,こんなにわかりにくいルートをふもとの村の人は正月に登っていたのでしょうか。しかも,急です。お年寄りにはチョット…じゃあないのでしょうか。

薄暗い植林の中を登っていると,目の前に大岩が登場。その下には祠もあります。手前には小屋もあります。おそらくここが行者岩でしょう。先ほどの村人によると,「昔,山の上から転がり落ちてきた大岩を行者が受け止め,村を守った。その際の手の跡もある。」というのです。なんとまぁ,すごいパワーの行者さんだったようです。手の跡を探してみますが,見当たりません。

急な登りにヨタヨタ

行者岩から東に向けて登ります。しだいに踏み跡は不明瞭になり,斜面は急に。しかも土の滑りやすい斜面なので,足元が不安定です。ヨタヨタと斜面を横切っていると,ようやく尾根に。といっても,この尾根にだって,明瞭な道があるわけではありません。かろうじて,踏み跡があるだけです。でも,あるだけマシというものです。あいかわらず,急な尾根を登っていると,先行しているS田さんが大声を上げました。見ると,O柿さんの赤布テープがあるではありませんか。きっと,この急斜面をO柿さんはMTBを担いで登ったのでしょう。歩きだけでも大変なこの斜面を。やはり,O柿さんはサイボーグです。

尾根はあいかわらず急ですが,頭上には新緑が広がっています。左に広がる薄暗い植林とは,対照的です。行者山の山頂が近づき,大岩(@)が見え始めます。尾根に登り,大岩に登ります。北の方を見ると,氷ノ山がかすかに見えています。岩の近くには電柱?のような物が立っています。でも,古そうなので,もう使ってはいないのでしょうか。時刻はもう12時半。登り始めてから1時間です。大甲山でランチタイムを考えていたのですが,S田さんによると大甲山ならもう1時間ほどかかるとか。ならば,この行者山でランチタイムをしましょう。でも,これから先のことを考えると,食後のコーヒーをのんびり飲んでいる場合ではありません。コンビニ弁当とおそばを食すと,早速,縦走の開始です。

  
ブナの木 その1 大甲山の三角点
ブナの木 その1
大甲山の三角点

行者山から大甲山

縦走尾根は狭く,明瞭な山道もあるので,迷うことはなさそうです。大甲山まではもう200mほど上がらなければならないので,基本的には登り基調の尾根道です。でも,先ほどまでの急な登りではないので助かります。871からは,植林と自然林にはさまれた狭い尾根を歩きます。右手の雑木林は鮮やかな新緑の海です。それに対して,左手の植林は薄暗く,歩く気にもなりません。

新緑を満喫しながらの尾根歩きは続きます。しだいに尾根が広がり,ブナの林が広がっています。大甲山が近いようです。それにしても,積雪のためでしょうか,変形したブナの木が目立ちます。他の木を抱え込むように変形したブナの木。大きく湾曲したブナの木。一旦,下向きに伸び,再び上向きに延びたブナの木。日本経済にも,こんなふうに上向きになる日は来るのでしょうか。斜面を見ると,種から芽を出したばかりの双葉?が,あちこちに芽吹いています。

なだらかな斜面を登ると,大甲山(A)です。行者山からは1時間ほどです。ここには三等三角点(1035.3 点名斉木)があります。三方は木立に囲まれていますが,南側の展望が開けています。少し奥の尾根方が少しは展望がいいようです。正面に黒尾山,右手には日名倉山,左手には遠く明神山が見えています。冬場の空気の澄んだ時には,瀬戸内海が見えるのかもしれません。

東の一山,東山高原,段ヶ峰,峰山高原,その他中部兵庫の連綿とした山なみ。南には黒尾山塊が大きく立ちはだかり,さらに西へ向くと,対向するひるがたわの大屏風が肩を落とす彼方に,ピークをあらわした日名倉山が,船越山へ向かって長く尾を美しく引いているのだ。そして,それらの懐かしい山群とは対照的に,ここから北には全く未知の山々が野性的な風貌で呼びかけているのだった。頂上からS字型にのびる,深々とした樹林の山稜によって結ばれるひるがたわの,その奥で半円形の頂上を現わす植松山(約1200m)。植松山こそ先年も日名倉山からまともに眺めて,その雄大な山容に新たな熱情を燃やした山である。未知の山への希望の道が一歩,身近になった思いである。  (『兵庫の山やま 総集編』多田繁次)

新緑の尾根道

大甲山でコーヒーブレイクをし,再び,縦走の開始です。地形図通りのなだらかな尾根道です。あいかわらず,右手の谷には,新緑の海が広がっています。この新緑の海を見ているだけでも,気持ちのいいものです。しばらく下ると,広い鞍部に出ます。先日の大倉部山でも思ったのですが,新緑の時期もいいのですが,これが秋の紅葉の時期なら違った景色が広がるのでしょう。同じ山を何回も登るのはあまり気が進みませんが,新緑の時期と紅葉の時期なら行ってみたいものです。

  
ブナの木 その2 こんな木もあります
ブナの木 その2
こんな木もあります

大甲山から40分ほどで荒尾山(1108m)(B)です。狭い上にあまり展望のない山頂ですが,植松山とそこへ続く縦走尾根が一望できます。この荒尾山からはトリガタワへ下ることもできるそうです。荒尾山から植松山への縦走路の情報がないので少し不安ですが,今までの尾根道の様子からは,ヤブ漕ぎになることはないでしょう。あいかわらずのお気楽モードで,縦走の再開です。

新緑の尾根から展望の尾根へ

あいかわらず,右手に新緑の海を眺めながらの楽しい尾根歩きです。ふと足元を見ると,木の屑がいっぱい散らばっています。顔を上げると,木の幹に穴が。その穴からはヒナたちの鳴き声が聞こえています。キツツキ類の鳥の巣なのでしょう。こんなに近くで見たのは,初めてでした。チョッピリ感激。鞍部からは,少しヤブっぽくなっている所がありますが,尾根を忠実にたどれば迷うことはありません。でも,このあたりからは,山道というよりは,踏み跡といった道になります。しかも,その踏み跡の主は,シカ等の獣類です。人間の足跡らしいものは見当たりません。やはり,このあたりは人があまり入らないのでしょうか。

  
鳥の巣 山上池と植松山
鳥の巣
山上池と植松山

1121付近は,ヒルガタワと呼ばれているそうです。ここあたりから,左手の植林がササ原に変わり,南側の展望が一気に開けてきます。荒尾山からの縦走ルートはもちろん,ふもとの岩野辺の集落も見えます。行く手には,植松山も見えています。展望のよさにしばし,足をとめ,写真撮影。

ササ原の獣道を進んでいると,左斜面に大きな池(C)を発見!近づいて見ると,おたまじゃくしがウヨウヨ。それ以外には,珍しい植物もないようです。でも,こんな山の上に池があるなんて,ビックリです。夏なんて,完全に干上がってしまうのではないでしょうか。そうなると,あの池の蛙たちは?と,余計な心配をしていると,どこからか「ウォー!」という吠え声のようなものが聞こえてきました。これには,S田さんもビックリ。クマかも!というので,2人で声を出すと,その声が谷間にこだましています。おもしろいので,何回も「ヤッホー!」「アッホー!」

再び,ササ原の尾根を進みます。1150の尾根付近からは,尾根をはずれ,植林の中を進みます。結局,この植林は,植松山まで続くことになります。植林の中には,テープがあるものの,どこでも歩けそうです。植松山に近づくと,プレートもあります。植松山の手前には,山頂池があります。ここにもあるのかぁと思い,行ってみると,池というよりは水溜りです。でも,ここにもおたまじゃくしはうようよいます。

大パノラマの植松山

植松山の山頂(D)は,木立に囲まれた展望のない,なだらかな広い山頂です。小さな鉄の祠が一つあるだけです。三角点(三等三角点 点名植松山 1191)は,その山頂から少しはなれた草の中にありました。踏み跡が山頂からあちこちに延びています。行ってみると,すばらしい展望です。荒尾山から1時間半の縦走路,ふもとの集落,もしかすると空気が澄んでいれば瀬戸内海だって見えるかもしれません。噂通りのすばらしい展望です。

山頂には祠があり毎年11月上旬に地元福海寺が植松山参拝日を定め信者たちが登山している。これは弘仁中(810〜24)恵心僧都が諸国を行脚の途中,この地に足を留めた。毎夜,上(植)松山の頂上に奇瑞の雲が棚引き,怪しんで登ったところ,美麗なる童子のお告げにより菩薩を刻み,一宇をここに建立した,との故事によるものである。
        (『播磨 山の地名を歩く』播磨地名研究会・編)

16時を過ぎ,初夏の太陽が夕陽になり始めています。ゆっくりはしていられません。早速,下山にとりかかります。植林の中の尾根をどんどん下ります。下草のない歩きやすい斜面ですが,あまり楽しめません。MTBで下るならおもしろかもしれませんが。植林の斜面から,谷川沿いの道になります。なんども川を渡り,下ると,「オゴウチの滝」という標識を発見。早速,オジャマすることにしましょう。

  
植松山山頂 オゴウチの滝
植松山山頂
オゴウチの滝

山道から数分でオゴウチの滝です。3本の流れのある見事な滝です。オゴウチの滝からも,何度も川を渡り,山道を下ります。谷川沿いの道なので展望もなく,おもしろみのない道です。結局,植松山から1時間半ほどの時間をかけて下山(E)

今回は,歩きの縦走でしたが,前半は新緑を,後半は展望を楽しめました。行者山の登りはじめから植松山下山完了まで,約6時間。今日は,登りはじめの時刻が遅かったのでゆっくりはできませんでしたが,もう少し早く登りはじめると縦走路中の景色をもっと楽しめたかもしれません。


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