“きん”でドキドキ 尾根は快適白倉山(2002.11.3)


  
P・@〜G
P・@〜G

“きん”!?

いつも同行するS田さんが,何をしでかしたのか,腰の調子がよくないということで,今日は歩きで山行きです。いくつか候補があった中で,S田さん考案のコースになりました。安富町と山崎町と一宮町との境界を歩こうというのです。もちろん,ただ歩くだけではありません。安富町側の登りの途中にある鉱山跡に寄り道。地形図では,なぜか“きん”とあるところです。そこから山崎町との境界尾根に登り,一宮町にある白倉山に向かいます。白倉山は,伊和三山の一つといわれ,麓の一宮町にある伊和神社との関係が深いとのこと。そして,白倉山からは,東に尾根を進み,南にある林道に下るという周回ルートです。

地形図には,破線がなく,道らしい道もありませんが,付近には新しい高圧線鉄塔がいくつかできているので,巡視路があるかもしれません。その上,町境界線上の尾根なので,踏み跡ぐらいはあるだろうというのがS田さんの読みです。今日は,MTBを持っていないので,少しぐらいヤブってても No Problem です。それよりも,気になるのが,地形図の“きん”です。地形図には,鉱山跡がたくさんありますが,ふつうは鉱山名が記されているだけで,そこから産出されるものまで記されていることは稀です。しかも,それが“きん”とくれば,興味津々です。なんだか,今日の山行きは,「山歩き」というよりも,「探検隊」という感じです。 ♪ボ,ボ,ボクらは中年探検団〜♪

鉱山跡へ

安富町の安志から北上。安富ダムを過ぎると,大河川沿いの道に入ります。このあたりは,富栖とよばれている地区で,我々中年探検団が目指す“きん”は,富栖鉱山というそうです。古い舗装路を行くと,廃墟になった事務所(P)とその脇には抗口がポッカリと口を開けています。その抗口からは,水が流れ出しています。あたりには人気もなく,この林道自体も利用する人はほとんどいないようです。

その事務所の中は荒れ果て,事務机の上には申し訳程度の祭壇があります。奥の棚には湯飲みなどの食器が放置されています。事務所のすぐ横にある抗口を探検。水が流れて出しているので,奥には入れませんが,かなり奥に続いているようです。道をはさんだ反対側には,封印された抗口があります。その手前には,車が2台放置されています。「放置」という言葉がピッタリ当てはまりそうな状況です。

リュックを背負い,歩き始めます。山肌には抗口があちこちにあります。それを見ながら歩いていると,今度は大河川の対岸に倉庫らしきものを発見。さっそく,探検です。行ってみると,そこには雷管の空き箱がありました。ということは,この倉庫は,採掘の際に使用する発破を置いておく倉庫だったのでしょうか。それにしても,先ほどの事務所といい,この倉庫といい,この鉱山を経営していた会社の名前が書かれていません。いったい,この鉱山は,どんな会社が経営していたのでしょう。

ズリ発見!

地形図にある破線の道を進まず,なんとなく,倉庫の近くにある橋からの谷道に進みます。薄暗い谷道がゆるやかになると,左手の小川に滝が出現。“きん”の滝とでも,命名しておきましょう。さらに進むと,今度は右手に炭焼釜跡が原型をとどめています。穴だけの炭焼釜跡が多いなかで,側面の石積みもしっかり残り,まだまだ使えそうです。

登り始めて30分。もうそろそろ“きん”のある付近でしょう。左手の尾根を見ると,なんだか不自然な地形です。もしかするとズリで谷が埋まっているのでしょうか。それなら,“きん”はすぐ上の尾根です。行ってみましょう。尾根を登り始めると,砕かれた岩が一面に広がっています。これはまぎれもなくズリです。やっぱり,“きん”はこの上だ。喜び勇んで谷を登ると,電線や配電盤などの電気関係の部品があります。右手の尾根を上ると,今度は電柱まであります。さらに上には小屋らしきものまで。電気に詳しいS田さんは,電線を見て,「これは動力用の線だ」

  
紅葉の向こうに抗口が 坑道
紅葉の向こうに抗口が
坑道

抗口だらけの岩肌

朽ち果てた木の橋のかかるもろい岩壁を登ると,小屋の中にはまだまだ使えそうなモーター類があります。さすがは電気屋のS田さんです。この上にも施設がありますが,もうこれ以上は登れないので,岩壁を下って,抗口のある方へ進みます。遠くから見ると,山肌にいくつもの穴がポッカリとあき,その付近には砕石が一面に積もっています。

道であったらしい平地を進み,抗口のある平地(@)へ。砕石が一面に積もり,あたりの岩肌には抗口がたくさんあいています。足元には,懐かしいカーバイトのランプがいくつも転がっています。右手の抗口には錆びたリヤカーがあります。頭上には,鉱石を運ぶのに使われたと思われるケーブルが,放置されています。砕石の上には,錆びた削岩機もあります。しかし,そのどれもが,20年ほど前までは使われていたような感じです。ということは,比較的最近までこの鉱山は稼動していたのでしょうか。

カーバイトランプ
子どものころ,夜店でよく見たカーバイトランプは,カーバイトに水を入れると,アセチレンを発生するので,そのアセチレンに火をつけて明かりとして使うものです。 [ CaC
+ 2HO → Ca(OH)+ C2 ] 電池が要らず,カーバイトと水があれば,ランタンとして使えるので,便利な時もあるようです。それにしても,あのアセチレンの臭いは今でも鮮明に思い出されます。このカーバイトランプは,今では見ることがないので,もう絶滅したものと思っていたのですが,HPを調べると,今でも売られているようです。これにはビックリ! 魚釣りの時に使うのでしょうか。

それにしても,抗口はあちこちに開き,その中で抗道はいくつにも枝分かれしています。中には,上部の岩場に抜けている坑道もあり,あたり一帯はアリの巣状態です。砕石を見ると,石英脈は少ないものの,中には黒い筋の入った岩があり,以前,銀鉱で見たことのあるものと同じです。やはり,この鉱山は金銀鉱の出る鉱山だったのでしょうか。HP「鉱山探訪」によると,「昭和11年(1936)に金銀鉱の採掘権が登録されて、昭和51年(1976)頃に操業のピークを迎えるが、以降は採算に合わなくなり次第に採掘されなくなった。」そうです。

  
岩肌は穴だらけ 境界尾根
岩肌は穴だらけ
境界尾根

境界尾根へ

鉱山跡をあちこち探検すること,約1時間。山歩きに来たことをすっかり忘れていました。鉱山跡の探検だけで満足ですが,せっかく来たことだし,白倉山にも寄ってみましょう。鉱山跡から谷道に下り,西の尾根を目指します。植林の中の道ですが,ところどころ,踏み跡の薄いところがあります。それでも,植林の中なので,歩きやすい。しだいに傾斜がきつくなり,谷の源頭部です。正面の斜面よりも,右手の尾根に出る方がショートカットになるだろうとの目論見でしたが,結局,それは支尾根。支尾根に出て,またもや登りです。あ〜あ,横着はするもんじゃない。

山崎町との境界尾根(A)に出ると,足元には関西電力の山崎実験センターが見えます。尾根道は明瞭で,さほど高低差もなく,快適です。これなら,MTBを持って来てもよかったとS田さん。ここまで持って上がるのが大変です。予想外の道に気をよくして,歩きます。

右手は植林,左手は雑木林を見ながら,北上します。巡視路が左手から合流し,そのすぐ上には新しくできた高圧線鉄塔がそびえています。あたりは切り開かれ,南の展望が開けています。高圧鉄塔や高圧線がジャマですが,海岸線にある低山の向こうには,秋の日の光を照り返した播磨灘が見えています。

再び,尾根道を登ります。一宮町と山崎町と安富町の境界があるピークからは,ゆるやかな下りです。途中で,2本目の高圧線巡視路と合流(B)。ここからしばらくは,巡視路ですので,倒木もなく,快適な尾根歩きができます。途中で,右手に鉄塔を見ながら,先を急ぎます。

  
播磨灘に浮かぶ家島諸島 一宮町の街並み
播磨灘に浮かぶ家島諸島
一宮町の街並み

白倉山へ

植林がいきなり切れ,視界が広がります。ここにも高圧線鉄塔がそびえています。地形図にある653ピーク(C)です。この鉄塔からは,北の展望が開けています。足元には,一宮町の街並み。その街並みの向こうには,黒尾山や山頂に雲がかかっている大甲山が見えています。目の前には,これから上る予定の849ピークと白倉山が見え,その右手には,大河川の谷と新設された高圧線鉄塔群が2本延びているのが見えます。風が強くて,じっとしていると寒いものの,展望がいいので,ここでランチとしましょう。

いつものように,食後のコーヒーもいただき,満腹,満腹。動くのがおっくうになってしまいます。しかも,目の前にそびえる849ピークが,はるか遠くに見えています。が,だからといって,動かないわけにはいきません。巡視路は,すぐ下の鞍部まではあるでしょうが,それからあとは?です。ヤブってれば,巡視路から下りましょう。

予想通り,鞍部からは少し道は悪くなり,踏み跡程度の道になりますが,それでもしっかりと尾根を進んでいるので, No Problem です。しだいに尾根を外れ,西よりの踏み跡となりますが,それでも尾根とつかず離れずの距離を保っています。小さなピークを巻きながらゆるやかに高度を上げていくのでしょう。と,この道に意外なものを発見。アイスキャンデーの包み紙です。こんな所までアイスキャンデーを持って上がって,食したのでしょうか。融けなかったのでしょうか。余計なお世話を考えてしまいます。

踏み跡はしだいに薄くなり,とうとう,尾根に登らざるを得なくなってしまいました。這うように尾根へ復帰。尾根にはきれいな道がついています。ありゃりゃ。これなら,はじめっから尾根を忠実にたどればよかったねぇ。急な尾根道を登ると,849ピーク(D)です。ここには,三角点はありませんが,石の標識があります。ただし,展望は全くなし。白倉山は,左手の尾根の向こうです。

  
尾根道 白倉山の三角点
尾根道
白倉山の三角点

左手の尾根を進みます。右手からは,遊歩道のような道が合流。この遊歩道?は,白倉山の少し先から,岡城川に向かって下っています。薄暗い植林の中の道ですが,白倉山はすぐです。山頂(E)には,三等三角点(点名伊和 841.7)があります。その三角点に近寄ってみると,そのあたりだけがまるでスポットライトを浴びているように明るくなっています。不思議に思って頭上を見ると,三角点の上だけが木の枝が張っていません。しかも,その木の枝を見ると,測量用の板が細い木のテッペンに取り付けられています。あんな上にどうやって取り付けたのでしょう。ナゾは深まります。

この白倉山は伊和三山の一つで,「神の依代としての岩座を祀り,…」(『播磨 山の地名を歩く』より)とあります。その岩座を探してみるものの,山頂から南西方向の尾根を下った所に大岩がありますが,祀るほどの岩ではありません。結局,わからず,849ピークに引き返します。

紅葉にはちょっと早かった

このピークからは,東に境界尾根を進みます。この尾根道もこれまで同様,快適です。やはり,境界尾根は,測量などで使われているので,明瞭な道になっているのでしょうか。ところどころに杭が打たれ,木にはテープのマーキングもあります。2つ目の小さなピークからは,南東方向に急な下りになっています。それまでの快適な道とは違って,たくさんの切り株がある切り開きです。あまりの違いに,ミスコース?と思ってしまうほどです。

急な歩きにくい尾根を下ると,鞍部(F)です。ここから大河林道に向かって,谷を下ります。谷を見ると,巡視路のプラ階段があります。ということは,これから下ろうとしている道は,巡視路です。これで安心です。あとは巡視路をたどるだけです。植林の中の薄暗い道ですが,ゆるやかに下る,歩きやすい道です。左手の谷川の水量が多くなり,川らしくなったところで右手に巡視路が登っています。そして,植林の外れへ。ここには,鹿除けネットがあります。ネットを過ぎ,再び,ネットから出ると,舗装された大河林道の終点(G)です。あとは,この林道を下るだけです。

途中には,何ヶ所か,巡視路の入口があります。林道の両側には山が迫ってきていますが,紅葉にはまだ少し早いようで,ところどころが色づいているだけです。ブラブラと歩き,鉱山跡の事務所へ。今回も寄り道をしたりで,楽しい山歩きとなりました。


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