ちょこっと山歩き 鈴鹿の山(2003.8.30〜31)


仙鶏尾根<野登山〜仙ヶ岳> (2003.8.30)

  
P・@〜C
P・@〜C

シマノ鈴鹿ロードの1日目のレースが終わり,昼からは山歩きです。昼からということで,時間的にもあまり余裕がありません。しかも,夕方になると,夕立が来るかもしれません。鈴鹿サーキットから近くて展望のいい山は…,ありました。野登山です。車道が山頂にまで延び,車で野登山に上がれます。そこから仙ヶ岳へ仙鶏尾根を歩く。完全ピストンコースですが,尾根からの展望が良さそうです。しかも,仙ヶ岳の東峰には仙ノ石といわれる大岩もあるとか。超お手軽コースながらも見所の多い山歩きになりそうです。

入道ヶ岳や鎌ヶ岳の頂上から,鈴鹿南部の山々を展望する時,逆光の中にいつも北アルプスの鹿島槍ヶ岳のように美しい双耳峰のシルエットを見せる山,それが仙ヶ岳だ。四囲に張り出した尾根はいずれも急峻でやせており,それだけに山容は鋭く,スリルのある登山が楽しめる。
               (『大阪周辺の山200』より)

鈴鹿からR1を経て,野登山麓の坂本へ。ここには棚田があり,その向こうには鬼が牙とよばれる岩壁が見えています。坂本からは東海自然歩道になっている車道を通り,野登山への車道の入口へ。途中に,野登山登山道の入口がありますが,歩いて登るだけで1時間以上もかかるとのことで,今回はパス。山頂への車道の入口には,「鶏足山野登寺」と「夢創庵」の看板が立っています。夢創庵というのは,この車道の中腹にある食堂のことでしょう。

車道をどんどん登ります。車が一台通れるだけの広さの車道ですが,ほとんど舗装されているので,普通車でも十分に登れます。登るにつれて,左手に鈴鹿や亀山の市街地が広がってきます。残念なことに,モヤのために白っぽくかすんでいます。

しばらく登ると,右手の尾根に風力発電装置が見えます。 「経済産業省 独立行政法人  産業技術総合研究所  風力研究プロジェクト  複雑地形風力タービン 鈴鹿山系野登山実験サイト」 とあります。夢創庵は,その先です。車道から見上げると,ふつうの民家っぽく見えますが,その駐車場からは鈴鹿の街並みが一望できそうです。さらに車道を登ると,今度は野登寺への分岐点があり,その先には仙ヶ岳への標示があります。さらに少し先にも,仙ヶ岳への標示があります。おそらく,こちらのルートは,尾根を忠実にたどるルートでしょう。先ほどのルートは,尾根をトラバースするようについているのでしょう。

車道をさらに登ると,巨大アンテナ(P)に到着。「NTTコミュニケーションズ株式会社  野登無線中継所」とあります。その脇の切り開きには,野登山のプレートがかかっています。???野登山って,三角点があるんじゃなかったっけ?だとすると,三角点はここにはないので,ここは野登山じゃないってこと?でも,地形図を見ると,三角点よりこちらの方が標高が高いので,こちらを野登山とするのもいいかもね。それに,野登寺だって,すぐ下にあるし。地形図では,三角点ピークが野登山としているようですが。

往復で2時間ほどのコースなので,あまり荷物も持たず,出発です。まずは,その三角点のある野登山へ。車道を少し下がったところから,林道があります。東のピークにあるアンテナへの管理道なのでしょう。しばらく林道を歩くと,三角点のあるピークが右手に見えてきます。道はありませんが,疎林の中を適当に登ります。上へ,上へ。しばらく登ると,右手に三角点のある小さな広場(@)を発見。三角点の横には,この三角点についての記述があります。

二等三角点 野登山 標高851m555
野登山三角点は,明治21年(1888年)10月23日に、陸軍参謀本部陸地測量部(現,建設省国土地理院)によって,設置・測量され誕生しました。
三角点の設置に必要な資財は,鈴鹿郡野登村安坂山(現,亀岡市安坂山町)で調達され,同村で募集した作業員により,2km余りの急峻な山道を運び上げられました。作業中の宿舎は,三角点四方約800m下方の観音堂が,また飲料水は,同方向約400m下方にあった小池が利用されたようです。
山の頂上などに埋められている御影石の三角点は,地球上の経度・緯度・高さが決まっていて,地図の作成,道路の建設などすべての測量の基準となっている極めて重要なものです。三角点標石を壊したり汚したりしないよう心がけましょう。

平成4年11月1日   わがまち魅力再発見事業庄内地区実行委員会 建設省国土地理院 三重県 鈴鹿市

三角点からは,地形図にある通りに南北に山道が延びています。???野登寺に向かうので,北の道を進みます。何のためか電柱があります。しだいに道はササでおおわれ,踏み跡がわかりにくくなってきます。そしてついには,ササ藪漕ぎ。横には電柱があるので,道は間違っていないようです。それにしても,何でこんなところに来てまで,藪漕ぎやネン!とムカついていると,すぐに林道へ飛び出してしまいました。こりゃあ,三角点への道はわからんわなぁ。「わがまち魅力再発見」たって,こんなササ藪ルートなら,再発見したくなくなりそうです。

  
野登山三角点 野登寺
野登山三角点
野登寺

野登寺へは,道がありません。地形図では,先ほどの車道から行けそうですすが,実際には道は見当たりませんでした。となると,この鞍部の谷を下って、野登寺に出ましょう。道はなくても,何とかなるでしょう。幸い,歩くのに支障があるほどの藪はありません。水の少ない谷を下り,右手の斜面に登ると,古い山道があります。そして,野登寺の境内(A)へ。

野登寺の縁起は古く,遠く平安時代の初期にさかのぼるといわれているそうです。江戸時代には亀山藩の祈願寺とされたことから,地元の信仰を集めたといわれています。その古刹ですが,まわりにあるスギの古木に比べて建物にはさほど歴史が感じられません。参道脇にあったであろう石仏も,今はありません。

参道を下ると,車止めの脇に看板があります。

天然記念物 野登山のブナ林
野登山山頂付近は,ブナを主体とする落葉広葉樹林の植生状態をよく残し,西日本太平洋側における代表的なブナ−スズタケ群叢である。
ブナ以外の高木層には,モミ,ツガ,コハウチハカエデ,ミズナラ,アカシデ,ホオノキ等があり,亜高木層にはシラキ,リョウブ,ウリハダカエデ,マンサク,クロモジ等が,低木層にはベニドウダン,シロヤシロ,ホツツジ,ホンシャクナゲ等のツツジ科植物のほかタンナサワフタギ,ツクバネウツギ等が見られる。野登山ブナ林は,西日本における植生の古い様相を示す貴重な例である。

   平成9年12月   亀山市教育委員会

なるほど,太平洋側でブナ林を見ることは少ないですね。兵庫県では,日本海側の山やまに多く見られます。天然記念物になっているだけのことはある?

車道に出て,いよいよ仙鶏尾根へ。仙ヶ岳への標示にしたがって,植林へ。薄暗い植林の中を横切るようにして鞍部へ。ここからは,短いながらも急登のルートが延びています。立ち木につかまり,息を切らしながらピークへ。いよいよ,尾根道ですが,早速,崩壊寸前の極細尾根の出現です。しかも,路面は風化した花崗岩の粗い砂地です。滑りそうでちょっと怖い。

徐々に高度を落としながら仙ヶ岳に近づきます。ロープのある岩場を下り,仙ヶ岳直下の裸地へ。ここから振り返ると,アンテナのある野登山がきれいに見えています。仙鶏乗越 「←野登山 仙鶏乗越 仙ヶ岳→  小岐須(屏風岩)↓」 に降りると,ここからは仙ヶ岳までは一直線の急な登りです。岩場あり,ガレ場あり,土の急斜面ありと,バラエティに富んだ山道です。もう,汗びっしょり。でも,振り返ると,野登山から仙鶏尾根が一望でき,左手には入道ヶ岳をはじめとした鈴鹿南部の山々が見えています。

  
仙鶏尾根の岩場 仙ノ石
仙鶏尾根の岩場
仙ノ石

急な登りがようやく終わると,仙ヶ岳東峰はまもなくです。目の前に巨岩が見えると,東峰(B)です。仙ノ石と呼ばれるこの巨岩は,不安定そうに立っており,仙ヶ岳のシンボルともなっているようです。残念ながら,登ることはできませんでしたが,この東峰からの展望はすばらしい!モヤがなければ,はるか伊勢湾までも見渡せそうです。麓では,第二名神高速の工事が行われています。標高1000m足らずの山からの展望とは思えません。

  
仙ノ石 仙ヶ岳山頂
仙ノ石
仙ヶ岳山頂

仙ヶ岳の最高点である西峰は,一旦,鞍部に下り,上り返したところです。山頂(C)は狭いものの,プレートやルート案内板などがあります。北には,宮指路岳が見え,さらにその奥には鎌ヶ岳らしいピークも見えています。東峰とは違った展望が楽しめます。まだまだ蒸し暑いものの,山頂にはトンボが飛び交い,ちょっぴり秋を感じることができました。

山頂からは,来たルートを戻るだけです。来る時は,振り返りながら見た光景を,今度は絶えず見ることができます。しかも,時間がたっているので,日の光の差し方が変わり,それまで日陰だったところに日が当たり,違った景色が広がっています。たまには,ピストンコースというのもいいものですねぇ。

  
仙鶏尾根と野登山 鈴鹿さつき温泉
仙鶏尾根と野登山
鈴鹿さつき温泉

野登山に帰り,車で下山。鈴鹿サーキットに帰る途中で「鈴鹿さつき温泉」へ。この温泉は,全国でも珍しいというJA直営の温泉です。とはいえ,あたりは田園地帯。田んぼの中の温泉って,ちょっと温泉って感じがしません。汗びっしょりのからだを温泉でさっぱりし,気分よく鈴鹿サーキットへ。今夜は,花火大会だ。


錫杖岳(2003.8.31)

  
P・@〜A
P・@〜A

シマノ鈴鹿ロード2日目のレースが終わり,今日は,帰り道である西名阪道沿いの山に行くことにします。錫杖岳です。標高676mとは思えないその鋭い山容は,亀山からも容易に確認できます。

伊勢の中西部から伊賀北部にかけて重畳と連なる山々は,いずれも6〜700mの低山である。そのなかにあってひときわ人目を引くのがこの錫杖岳である。槍のように鋭く突き出した山嶺は,遠くからでも容易に識別でき,それだけにこの地域の山の中ではいちばん登高欲をそそられる。
錫杖岳は別名を雀頭山ともいう。いまでも地元ではこの別名でよばれているといわれるが,いずれにしろ鋭い山容の形容として大差はない。
(『三重県の山』より)

西名阪道の向井ICを降りると,すぐに錫杖岳の案内板があります。舗装された山道を進むと,駐車場(P)の看板があり,錫杖岳登山口はすぐです。先客は4台。やはり,錫杖岳は人気スポットのようです。昨日同様,片道1時間ほどの山歩きなので,荷物はほとんどなし。でも,念のためにヒルノックを靴に吹き付けます。

登山口には, 「←錫杖ヶ岳 676m2.3km 登山口    皆の山マナー守って楽しく登山♪」 という案内板があります。その脇には,「伊勢幹線 火の用心 bX8 →   伊勢幹線 火の用心 bX7 →  伊勢幹線 火の用心 bX5 →」 の標示板もたっています。この加太からのルートは,『三重県の山』では,藪で要注意ルートとして紹介されていますが,現在では駐車場&案内板完備の快適ルートになっているようです。時間的にも1時間ほどで登れるので,お手軽登山にピッタリです。そんなところが人気スポットになっている所以なのでしょう。

登山道は,植林の中をゆるやかに登ります。ところどころに,丸太の橋がかけられており,よく整備された道です。左手には,小川が流れ,涼やかな水の音が聞こえてきます。真夏を思わせる日の光も植林にさえぎられ,風はないものの快適に歩けます。小川を右へ,左へ渡りながら,登ります。途中では,小川の中を通るところがあり,雨が降ると,靴がぬれそうです。

  
植林の中の登山道 経ヶ峰を正面に柚之木峠
植林の中の登山道
経ヶ峰を正面に柚之木峠

植林を登りつめると,目の前が急に明るくなります。柚之木峠(@)です。峠には案内板がありますが,その少し上にはベンチがあり,正面に経ヶ峰を望みながら休憩をとるのに好都合です。さて,これからは錫杖岳山頂までは,変化に富んだ尾根歩きです。

この尾根も,昨日の仙鶏尾根同様にやせた尾根です。両側は切れ落ち,樹木が生えているので急斜面に見えますが,ガケといってもいいぐらいのものです。しかし,その分,木立の間からは南北の展望が開けています。短いながらも急な上りを繰り返し,高度を稼ぎます。谷から吹き上げてくる風が心地いい。

  
尾根の木の根道 クサリ場もあります
尾根の木の根道
クサリ場もあります

しだいに勾配がきつくなり,ロープを張っているところが出てきます。このあたりから,山頂に向かって一気の急登が始まります。ロープがなければ登れないということはありませんが,やはりロープを使うと楽です。振り返ると,西の展望が開けています。霊山が見えているはずですが,どの山がそうなのか。何箇所かのロープポイントを過ぎると,今度はクサリポイントです。せっかくですので,岩場に取り付けられたクサリをにぎり,登ってみます。それほど急ではありませんが,楽しい。それにしても,山頂直下のこの急斜面。さすがは,「槍のように突き出した」山だけのことはあります。

山頂手前で下垣内からのコースと合流。錫杖湖を眼下に見ながら錫杖岳山頂(A)へ。岩だらけの狭い山頂からは,360度の展望が広がっています。東を見ると,伊勢平野。北には,昨日登った野登山と仙ヶ岳。その手前には,昨年登った羽黒山が見えています。その麓に沿って東名阪道,西名阪道が延びています。足元には錫杖湖が見えています。1時間ほどの山歩きで,標高676mとは思えない展望と高度感をゲットできるなんて,大満足です。そのうえ,涼風が吹き抜け,気分爽快!錫杖岳が人気スポットになっているわけを実感。

  
こいのぼりの立つ錫杖岳山頂
こいのぼりの立つ錫杖岳山頂

錫杖ヶ岳
関町加太と芸濃町河内の境界をなす錫杖ヶ岳は,標高677m,山頂は突兀とした岩山からなり,土地の人は「雀頭」と呼んでいる。
錫杖の名は,山容が修験者の持つ錫杖に似ているからだとの説もあるが,さだかでない。
錫杖ヶ岳は古くより雨乞いの霊山としても知られ,ひでりの続くときには加太や関から,また芸濃町の椋本・雲林院などの五ヶ村からも錫杖ヶ岳へ登った。南無八幡大菩薩の幟を先頭に祈りの人びとの列が続いたと伝えられている。古くは宝暦5年(1755),明治では29年(1896),大正2年(1913)の干ばつにも雨乞いが行われた。
永禄(約400年前)の頃のこと,安曇川の門前ヶ淵に棲む龍の化身と,長徳寿(芸濃町)の大器和尚とのふしぎな出会いが,「龍のうろこと雨乞い」の伝説となり,錫杖ヶ岳が雨乞いの山と仰がれてきたものであろうか。
晴れて空気の澄む季節には,遠く木曾の御嶽(3063m)や伊勢湾,知多半島なども視界に入り,眼下には錫杖湖や経ヶ峰とその展望はすばらしい。また,登山道は自然の中の道で,季節の草花や樹にもふれることが出来,登山者の絶えない山であるところから,加太昭親会ではいつまでもこの山を愛すべく心を寄せているものである。

    平成5年11月吉日     加太昭親会

  
羽黒山と野登山・仙ヶ岳方面 錫杖湖
羽黒山と野登山・仙ヶ岳方面
錫杖湖

山頂で展望と涼風を満喫し,下山です。完全なピストンコースなのですが,下りの景色が微妙に違うので,これまた楽しい。山頂でいっしょになったハイカー氏としばらくの間,おしゃべりをしながら下ります。峠の手前で休憩をするというハイカー氏と別れ,植林へ。小川で汗をぬぐい,下山。

今日の錫杖岳も,お手軽にもかかわらず,展望がよく,変化に富んだ登山道も楽しかったです。惜しむらくは,夏場につきもののモヤです。モヤのために遠望がきかず,ちょっと残念。それでも,山頂からの錫杖湖といい,高度感といい,いい山でした。


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