秋を感じて尾根歩き 点名筏 (2003.10.12)


  
P・@〜C
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急遽,予定変更!

今日は秋の三連休の中日ですが,この連休はすっきりとした秋晴れが期待できません。今日の天気予報でも,昼から雨とか。同行のS田さんとは,とりあえず,お手軽散歩で建屋の巨岩を見に行こうということで加古川を出発。ところが,生野を過ぎると青空が見え始めました。心配した雨も降りそうにないので,ここまで来て,散歩だけとはちょっともったいない。早速,行き先を変更。あれこれ相談した結果,2週間前に行った大路の近くの山に行くことに決定。ふもとには史跡や鉱山跡があり,三角点ピークからの展望も期待できるうえに,下山時の谷の上流には滝もあるという。これまた,1粒で2度3度美味しい企画です。

結局,加古川を出て3時間。大屋町の和田から西の谷へ。人家はなくなり,谷が迫ってきます。と,前方に炭焼き小屋「ふるや炭工房」を発見。さらに行くと,今度は右手の建物ではお祈りをする人たち。左手には,アルトス ヴィレッジという名のキャップ場です。こんな山奥にキャンプ場?!ビックリです。でも,あとで調べると,新聞に何回も取り上げられたほどのキャンプ場だそうです。もちろん,キャンプ場のリストにもあります。決して「パラダイス」ではありません。

いにしえに栄えし里に…

車をキャンプ場の先(P)にとめ,出発です。と,道の脇に案内板と石碑があります。見てみましょう。

あなたは信じられますか?  ロマンの里 古屋の変貌

見渡す限りの森林の中に佇んでいるあなた今ここで50年〜80年前にタイムスリップして見て下さい。
当時の古谷は田地300アール稲麦の二毛作,畑地も300アール,馬鈴薯,豆類,蔬菜,雑穀などは自給を上廻る生産でした。
春秋2回の養蚕は農家を支える最大の収入源でした。桑畑は400アール,当時は森林はなくここに三十数戸の家が点在して克苦勉励していました。養蚕最繁時には大屋町,波賀町,一宮町からも多数の手伝人が入村して来られた。家屋も養蚕に適した大型で草屋根が主でした。
又,良質で定評のあった炭焼きも収入を支え各所に煙が見られました。篤志農家は苹果,桃,梨など果樹栽培も開拓して成果を挙げていました。
小倉製糸工場はボイラーを設置(工場跡標柱をご参照下さい)男女従業員100名を超えその業績も秀抜でした。
又,霊鷹鉱山が創設され50余名が就業,坑道100米と言うこの人々は村民とも克く親しみ盆踊り,山神祭,赤滝祭,地蔵祭等に参加し盛大で日頃の労苦を忘れ明日の活力となっていました。
南谷小学校・古屋分校があって4年生までが学んでいました。各地には山崩れやダム建設に依り廃村になった地区も多くありますが,環境の支配と高度成長の余波もあり1000年の伝統(小倉本家墓園参考)と実り豊かに栄えたユートピア古屋の地を心ならずも追いやられた当事者のみが知るロマンの里古屋を探訪されたあなた,いにしえの面影を止めぬ森林の中で今,果たしてこれを信じることが出来るでしょうか。

     資料  ふるや誌 著者 千葉保氏に依る     製作(並びにアレンジ)明石 浅野兼太郎

読んでみると,この山奥の地が,過去にはどれだけ栄えていたのかがわかります。それにしても,分校があったり,自給を上回る農業生産があったり,製糸工場まであったなんて,ビックリです。にわかには,信じられません。

すぐに舗装路はおしまい。植林の中の道となりますが,その薄暗い植林の中のあちこちに石垣が見えます。これらは,小倉家の屋敷跡なのでしょう。あたり一帯に残る苔むした石垣から当時の規模の大きさをうかがい知ることができますが,当時の遺物といえるものはこれらの石垣とさびた五右衛門風呂の釜だけ。今ではその屋敷跡にも木が植えられています。100年程前は,多くの人が働き,生活したこの地は,今ではありきたりの薄暗い植林になってしまっています。

遺跡 小倉屋敷石垣
この西北一帯,数年間の歳月と巨額の費用を投じて築造,宝暦元年(1751)の完成と言う。基模豪壮にして地域的にも個人の築造としても高く評価される貴重な遺跡である。

養蚕という当時の花形産業は,今ではすっかり衰退しています。当時の人たちには,そんなことは想像だにできないことでしょう。近年では,重厚長大産業が日本経済の中心でしたが,それが陰りを見せています。高度成長期に育ってきたボクには,そのことがまだピンときませんが,これもまた,歴史の流れというものでしょうか。とすれば,現在の花形産業であるIT関連産業も100年後はどうなっているわかりません。日本経済を引っ張っているトヨタ自動車は,100年後は存在しているのでしょうか。 「ゆく河の水は絶えずして,しかも,もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは,かつ消えかつ結びて,久しくとどまりたる例なし。世の中にある人と栖と,またかくのごとし。」

  
小倉屋敷石垣 マムシグサ
小倉屋敷石垣
マムシグサ

小倉家墓園を過ぎ,植林を進むと,地形図にある分岐点です。S田さんによると,左に行けば霊鷹鉱山跡だそうです。ちょっとおジャマしてみましょう。しばらくすると,開けた谷に出ます。ここがズリかな?でも,今はシダが一面を覆っています。石を見る気は失せ,次にひと思案。このまま破線ルートを行って尾根に出るか,引き返して分岐点から先週S田さんが通ったという山道で尾根に出るか。先の谷を見ると,道らしいものがなさそうなので,引き返すことに決定。分岐点に戻り,薄暗い植林の中の道を進みます。

手足四輪駆動でGO!

目指す鞍部は,地形図の破線の終わりから左手の谷を進まなければいけません。道なりに進めば,右手の谷に行ってしまいそうで要注意です。左手の谷へ,薄い踏み跡をたどりながら進みます。薄い踏み跡は獣道となり,消えたり現れたりです。でも,目指す鞍部はこの谷の上なので,強引に登りましょう。しだいに傾斜は大きくなり,足元が滑ります。木立につかまりながら,一歩一歩進みます。下から見ると崖のように見える斜面ですが,尾根の近くは明るい雑木林になっています。登るにつれて,傾斜はますます大きくなり,手足四輪駆動でかろうじて登ることができるほどです。withMTBだったら,とんでもないことになっていたでしょう。

汗ビッショリになりながら,ようやく鞍部(@)へ。それまでの薄暗い植林から明るい雑木林になり,ところどころで黄葉している木も見えます。地面は,ふかふかの落ち葉のじゅうたんです。雰囲気のいい静かな山の秋です。その静寂を破って後ろからS田さんの叫び声がします。「シンドイ!」「腹,減った〜!」「昼にしよう」「ランチタイムや〜!」「いつになったら食べるんや〜!」時刻は12時半なのでランチタイムですが,こんな展望のない鞍部ではイマイチです。せめて,展望がよさそうだという三角点ピークでランチタイムをしたいものです。ということで,「ランチタイムは,まだまだや〜!」

尾根は立入禁止!?

ところがそのS田さんは,尾根に出たとたんに,その雰囲気の良さにすっかり元気回復。下草のない落ち葉の尾根は,どこでも歩けます。ところどころにあるクモの巣に夏の名残を感じますが,この日は夏を思い出させる暑さです。来る時の車中での雨や寒さの心配はどこへやら。気持ちよく,尾根を進みます。尾根は,植林帯と雑木林の植生界になっています。見ると,「境界見出標 大昭和製紙」と書かれた鉄板が木にかかっています。別の所では,「立入禁止 火気厳禁 大昭和製紙」の鉄板も。なんじゃ コリャ〜!こんな所まで来て「立入禁止」とは,どうよ? ということは,この山域は大昭和製紙の持ち山なのでしょうか。でも,いったい,製紙会社が何のためにこの山を所有しているのでしょうか?まさか,紙の材料の木を切り出すわけではないでしょうし。尾根には松の木が多いから,サイドビジネスとしてマツタケの販売をしているのでしょうか。ナゾです。尾根には,鉄板の他にもコンクリート杭があったり,木に黄色ペンキが塗られていたりするので,迷うことは少ないようです。ただし,下りだとちょっと迷いそうな個所がありますよ。

急な上りは2個所あります。先ほどの鞍部への急登と同じくらいの傾斜ですが,距離が短いのがせめてもの救い。この2箇所の急登をガマンすれば,楽しい尾根歩きができます。時々現れる鞍部には,人工的とも思えるような平地があります。砂鉄を採った跡のようにも思えますが,こんな稜線上でカンナ流しはできないでしょう。やっぱり,自然にできた地形なのでしょうか。二つ目のナゾです。S田さんによると,このあたりの松は,ふもとの古屋の人たちが植えたとのこと。でも,いったい,何のために松を植えたのでしょう。炭焼きに使うため?炭焼きの木といえば,ナラ,カシというのが有名ですが,松でも良質の炭ができたのでしょうか。これもまた,ナゾです。

  
鞍部からの尾根 その1 鞍部からの尾根 その2
鞍部からの尾根 その1
鞍部からの尾根 その2

静かな雰囲気いい尾根を,にぎやかに歩きます。まったく展望はありませんが,広い尾根をのんびり歩くのはいいものです。この尾根の雰囲気を写真に撮っても,残念ながら,その雰囲気までは伝わりそうにありません。逆ルートなら,MTBで快適なダウンヒルを楽しめそうです。でも,この尾根までMTBをどうやって運び上げるか,それが大問題です。鞍部への急登を思い出すと,それは限りなく不可能に思えてきます。主尾根への最後の急登を登り終えると,時刻は13時を回っています。S田さんのカラータイマーは点滅どころか,消滅しかかっています。でも,三角点ピークはすぐそこです。

  
落ち葉のじゅうたんを踏みしめて 点名筏 三角点
落ち葉のじゅうたんを踏みしめて
点名筏 三角点

展望のない三角点ピークと極楽尾根

小さなピークを登り,5分ほどで三角点ピーク(A)へ。あったどぉ〜!苔むした三角点(三等三角点 点名筏 953.7)があったどぉ〜!まわりは小さな広場になっていますが,S田さんの予想したような草地ではありません。点の記では,三角点から西に草地が広がっているようになっていますが,いかんせん,それは30年程前の記録です。それから30年の歳月が流れ,植生は大きく変わってしまったようです。小さな広場は,木立に囲まれ,展望らしいものはありません。わずかに,木々の間から近くの山が見えるだけです。ちょっとガッカリ。しかも風が強いので,広場でのんびりランチタイムとはいきません。風を避けるように尾根の反対側斜面に座り,ランチタイムです。でも,傾斜地に座っているので,いつの間にかお尻がズルズルと滑り,下がってしまいます。座り心地の悪いこと,この上なしです。それでも,なんとか食後のコーヒーまでいただき,満足,満足。

さて,これから主尾根をたどり,2週間前に通った大路越えに向かいます。小ピークまでは来た道を引き返します。小ピークからは,いったん登り返しがあったあとは,尾根は細くなり,俄然雰囲気のいい尾根になります。路面には落ち葉のじゅうたん。雑木林の木々は少し早めの黄葉。その木々の間からは,南北の展望が開けています。明るい尾根です。小さなアップダウンさえも,楽しい尾根歩きのアクセントです。もちろん,MTBがあれば,快適ダウンヒルまちがいなしです。予想外の極楽尾根に大喜び。今年最高のヒットコースです。ただ,こんな尾根がどこまで続いているかですが…。

  
極楽尾根に跳び上がって喜ぶ? 尾根にも秋が
極楽尾根に跳び上がって喜ぶ?
尾根にも秋が

妙見山の大きな山容を木々の間から遠望しながら,快適な尾根歩きは続きます。857ピークへの上りもさほど急ではありません。しかし,857ピークから鞍部への下りは,やや急ですが,あいかわらず,歩きやすい路面です。下りの途中では,大杉山,須留ヶ峰,その左には御祓山がよく見えます。足元には,見覚えのある鞍部(B)です。下りきると,そこは2週間前に来た大路越え。ここから東の冨土野峠に向けて尾根歩きをしたのですが,今日は北に向かって谷を下ります。

  
須留ヶ峰 大路越え
須留ヶ峰
大路越え

峠道は何処へ?

植林の急斜面を下りますが,谷に下ってしまうと,暗く歩きにくい沢伝いの道になりそうです。大路越えからの昔の峠道は,どこにあるのでしょう。常識的に考えると,谷に向かっているはずですが,踏み跡らしいものもありません。もう,すっかり消滅してしまったのでしょうか。となると,尾根を歩く方が楽そうです。ということで,すぐ近くの尾根を目指します。植林を横切り,小さな尾根へ。予想通り,尾根は雑木林の疎林で歩きやすくなっています。

気分よく,下ります。尾根を下りきった所からは,植林へ。ここも歩きやすいので楽チンです。でも,どう考えても昔の峠道ではありません。やっぱり,谷沿いに峠道はあったのでしょうか。植林はよく手入れがされており,最近も人が入った形跡があります。ということは,この植林からは踏み跡はあるということです。植林の北端を目指して,尾根を歩きます。谷との高低が最も大きくなった所で,尾根は急な下りに。そして,谷へ急降下(C)。予想通り,谷沿いには明瞭な山道があります。やっぱり,昔の峠道は谷沿いに下っていたのでしょうか。

滝も何処へ?

小川に沿って,植林の中の道はゆるやかに下ります。S田さんによれば,あとはこのまま,歩けばアルトスヴィレッジの裏の林道に出るはずだそうです。ということは…滝はどこやネン!?左手の小川に気をつけながら歩くものの,結局,滝はなく,林道(林道古屋線 幅員4.0米 延長595.76米)へ。林道はすぐに終わり,アルトスヴィレッジの裏に出て,今回の山歩きはおしまい。おや〜?滝はどこへいったんや?帰りに和田の案内板を見ると,我々が谷に下降した地点のもう少し上流だったようです。ちなみに,霊鷹鉱山跡も,我々が鉱山跡と思った地点よりももっと谷の上でした。なんのこっちゃ。

  
アルトスヴィレッジ ふるや炭工房
アルトスヴィレッジ
ふるや炭工房

今回は,1粒で3度美味しい山歩きを狙いましたが,結局,美味しかったのは史跡だけ。鉱山跡も滝も空振り。でも,近年稀なほどの極楽尾根コースという美味しい山歩きができたので,今回もメデタシ,メデタシです。

いにしえに 栄えし里に 家は無く  うぐいすの鳴く 谷のせせらぎ

 

駐車場11:20  小倉家11:30  鞍部12:25  尾根13:15  三角点13:20  ランチタイム13:20〜13:50  大路越え14:35  林道出合い15:15  アルストヴィレッジ15:25


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