極楽尾根道の東山とブナの阿舎利山(2000.8.16)


東山

ああ,思いあこがれてようやくたどり着いた頂上が,このように美しく清らかであることが,私にとってどんなにうれしいことか。なんの特徴もなくだだっぴろいこの山上の,しかも木ガヤの波をかきわけて,ぴったりと三角点に到達することが出来たこの喜び―私はかつての山のパイオニアが経験したであろう初登頂の感激を想像してみたいほどの心の昂ぶりを覚え,だれ一人いないこの広い広い山嶺に向かって,何か大声で叫んでみたいようか衝動にかられる。(『兵庫の山やま総集編』多田繁次)

  
P・1〜4
P・1〜4

フォレストステーション波賀

かつてはあまり人が訪れることのなかった東山ですが,現在では,その中腹に総合レジャー施設ができています。「フォレストステーション波賀」という名前で,オートキャンプ場,コテージ村,天体観測施設,遊歩道,名水や天然ラドン温泉まであります。昨年完成したばかりなので,どの施設もきれいです。ここの遊歩道が東山山頂への登山道となっています。その山頂には,展望台まであります。もはや,多田繁次さんが東山を登ったころの面影はまったくありません。

しかし,だからといってその施設を利用した人の多くが東山に登っているかというと,必ずしもそうとはいえません。その意味では,まだまだ俗化されていません。事実,山頂に登ってもゴミは無く,荒れた感じはありません。しかも展望台には,四方に見える山の山名表示板まであります。至れり尽せりという感じです。たまにはこんな山があってもいいでしょう。

登山道

以前,このコースを歩いたS田さんの提案により,山頂へは東山登山コース(2km)を使うことにしました。山頂へは,東山尾根コース(2.4km)がありますが,そのコースは下山につかい,東山をグルッと周回しようというわけです。この下りの東山尾根コースは,S田さん曰く「超初心者歓迎コース」なんだそうです。楽しみです。

(1)から登り始めますが,道は植林帯の中のジャリ道で,ところどころ木の階段があります。MTBは乗車不能です。押しと担ぎでひたすら高度をかせぎます。植林帯の中なので直射日光は当たりませんが,このときは風が無いため,いきなり汗が噴き出します。でも,傾斜はそれほど急ではないので,おしゃべりしながらの山歩きwithMTBです。もっとも,傾斜が急な時でも叫び声を上げたり,しゃべったりするわけですから,いずれにしても静かに歩いていることはありません。それなのに,S田さんは熊除けの鈴をぶら下げています。鈴よりしゃべり声の方がうるさいと思うのですが…。

植林帯を抜けると,道は水平になっています。結局,まともにMTBに乗れたのはこの付近だけです。あとは,部分的に数m乗れるという感じです。最終的には,登りのMTB乗車率30m÷2000m→1.5%ところです。山頂に近づくと,道の脇にはブナの木が見られるようになります。それまでの殺風景な植林帯の中の道と違って,展望もあり,木陰には涼しい風も吹いています。ヤッパ,山はこうでなきゃあねぇ。

  
山頂近くの自然林の中を登る 山頂の展望台
山頂近くの自然林の中を登る
山頂の展望台

東山山頂

最後の指導標を右に行くと,山頂(2)です。左は,S田さんの言う「ニセ山頂」とか。山頂には,三角点もあり,真新しい木の展望台もあります。しかも,その展望台には,山名表示板までついています。同行のS田さんは,はじめて見た山名もあり,興味津々です。表示板と実際の景色を合わせてみますが,当然のことながら,ピッタリという感じではありません。らしいかなぁという山もあります。でも,おかげで山座同定が容易に楽しめます。

いつものように記念撮影とS田さんの「おつとめ」を終え,待望の下山です。が,ちょっと寄り道。ニセ山頂へは,植林の中を行くことにしました。と,見慣れた赤テープを発見!こんなところにもO柿テープです。O柿さんは,東山が今のように整備される前に登ったそうで,かなり苦労したようです。S田さんも,ずっと以前にMTBで登った時には,この植林をウロウロして三角点に到達したとか。「人それぞれ,人生あり」ってところです。

東山尾根コース

ニセ山頂からいよいよ一気のダウンヒルです。道はハッキリしていて,枝がスポークに絡みつくことはありません。S田さんが言うように「超初心者歓迎コース」です。快適に下ると,しばらくして植林帯と自然林の境界に出ます。植林からは涼しい風が吹き上げてきます。標高1000mの恵みです。下山道の半分はこんな所を走るというのですから,ヤッパリMTBはやめられまへんなぁ〜。

  
山頂近くの自然林の中を登る 山頂の展望台
山頂近くの自然林の中を登る
山頂の展望台

快適な林の中の道を過ぎると,遊歩道1号と2号の分岐(3)に出ます。遊歩道はもう1本ありますが,できるだけ長い距離を下りたいので,1号を選択。この道は,木のチップを固めた道で,アスファルトでもなく,地道でもなく,チュ〜トハンパやなぁ〜!でも,これって地道のように見えて,いいかも。遊歩道は,レイによって丸太の階段がいたるところにあります。MTBでも乗車可能ですが,丸太の階段がそのうちに崩れたりしないかと,余計な心配をしてしまいます。

木のチップの遊歩道を下ると,舗装路の車道(4)です。オートキャンプ場の前を通り,きのこ園,コテージ村を抜け,東山温泉メイプルプラザの前の駐車場(P)に到着。登りは1時間たらず。下りは30分ほどのお手軽コースです。でも,お手軽とはいえ,山頂の展望はいいし,下りも楽しいし,S田さんの言う通り「超初心者歓迎コース」です。

阿舎利山へのリエゾン

東山を下り,次は阿舎利山です。阿舎利山へは,先日の林道を波賀町側から登り,峠からアタックです。阿舎利山への林道は,野尻大橋の手前から入ります。はじめはコンクリート舗装の狭い道ですが,しだいに地道に変わり,谷が広くなっています。

と,谷がさらに広がった所に「廣地タタラ製鉄跡」の標識があります。その標識の側面には次のようなことが書かれています。

この後ろの杉山の中にタタラ(製鉄)跡があります。生徳(1711年)から慶応(1865年)年間に多くの人たちが働いていた遺跡です。また,前の土地と50m奥に住居跡があり,当時の墓碑も多くあります。

  
タタラ跡の標識 工人の墓地
タタラ跡の標識
工人の墓地

墓碑は林道の少し先の方に集められ,きれいな墓地になっています。そこの石碑に次のような記述がありました。

  宍粟郡北部は8世紀初頭すでに和鉄を生産し,以来,中・近世を通して盛行した。これは東西に通る花崗岩層類に含まれた砂鉄と,深山地域の木材資源からの木炭によるものであった。千草鉄(宍粟鉄)と知られ,刀剣・農具・日用鉄器の材料となった。
  ここ広路山では引原川筋の多くのタタラ炉(製鉄)と同じく多数の工人が18世紀初めから19世紀中頃まで働いていた。

その石碑の裏には,この墓地を作った人の解説も。

この碑は,志水慶太郎氏の長男志水慶雄氏によって建てられたものです。この野尻の土地に疎開され,ご両親とともに広路の土地で炭焼きをしたり野菜つくりをされた。この思い出が忘れられず,また,長い間,この「たたら工人」のご加護をうけたことに感謝し供養として,石灯籠とともに建立されたものです。  平成10年5月吉日 波賀町教育委員会

この墓地の墓石を見ると,文政年間のものが多いようです。

右側の段々になった荒地を見ながら,住居跡か,畑の跡かなどと,遠い昔に空想をはせながら,林道を進みます。しばらく進むと,分岐が。右手に進むと農場に入ってしまいました。こんな山奥で農業をしている人たちがいることにビックリ,クリ,クリ,クリックリ!地形図では,桑畑になっています。農場の人たちのいぶかしげな視線を受けながら,すごすごと撤退。再び林道に戻り,標高をかせぎます。途中で「通行止め」の看板がありますが,この通行止めは,峠の先の土砂崩れのことなので,看板の脇を抜け,なおも直進。目の前には,阿舎利山から派生した尾根が見えます。尾根の最上部は自然林のようです。それほど荒れていない路面をゆっくり進み,峠(P)着。

静かな植林の中の道

遅いお弁当を,林道の真ん中で食し,さあこれから阿舎利山です。北の尾根を登ります。今回は,S田さんによるとMTBは乗れないということで,歩きです。尾根の植林帯は,切った枝や幹が放置され,荒れた感じです。中には,切ろうとした跡が生々しい木もあります。どんな理由があったのかはわかりませんが,こんなふうに山を荒らしてしまってもいいのでしょうか。植林で,自然林を切り倒し,その植林を今度は荒らし放題。とりつかれたように山やまを植林しまくったそのツケが,今になってまわってきたようです。

阿舎利山への登りは,それほど迷うことがありません。基本的には,上へ,上へ登ればいいのですから。だけど,下りは要注意です。支尾根がたくさん派生しているので,間違って支尾根を下ってしまうと,山が深いだけにやっかいです。落ち葉でふかふかの尾根道は明瞭です。以前にS田さんが登った時は,もっと笹でヤブっぽくなっていたそうですが,今ではその一面の笹が枯れてしまい,MTBでも乗車可能です。ああ〜,こんなことならwithMTBで登ればよかったなぁ〜と後悔。が,そのwithMTBで登った人がいたのが判明。レイの赤テープです。O柿テープです。ですが,赤テープの登ってきたルートが,我々とは違っています。どうやら,境界線を登ってきたようです。

ブナの林

その他にも赤のビニールテープやローソンのナイロン袋,白テープなどがあり,道に迷うことはありません。1004m付近(1)からは左手に自然林,右手に植林という植生界を進むことになります。しばらくすると,左手の自然林にブナが混じるようになります。見上げると,ブナの葉の黄緑色が鮮やかです。殺風景な植林とは対照的です。

笹のヤブを抜け,(2)のピークへ。赤いビニールテープによると,ここからは南東の尾根を下ると阿舎利の集落に下ることができるそうです。でも地図には道はありませんし,境界尾根でもありません。本当に下ることができるのでしょうか。謎です。

目の前のピークを登ると,そこが山頂(3)です。40分ほどの山歩きです。山頂もそうですが,登山道もほとんど展望はありません。しかし,途中からのブナ林の中を歩くのは,気持ちのいいものです。山頂もブナに囲まれています。少しはなれた所にはブナの大木が3本あります。静かな山頂です。境界線は北の尾根に続いていますし,道も明瞭です。この道は三久安山へと続く尾根道なのでしょうか。

  
阿舎利山山頂 ブナの大木
阿舎利山山頂
ブナの大木

いつものように記念撮影と,S田さんの「おつとめ」が終わると下山です。下山はピストンですが,支尾根に気をつけ,地図で現在地を確認しながら下ります。下りもふかふかの尾根道がイイ気持ちです。昼なお暗い植林帯になると,峠はすぐそこです。荒れた植林を抜け,峠へ。登り始めの荒涼とした林のようすからは想像でいないブナの林に感激の阿舎利山登山でありました。お盆で,有名な山は都会並みの混雑とか。そんな混雑より,こんな静かな山を歩く方がどれだけ素晴らしいことでしょう。そんなことを再確認させてくれる今回の山行きでした。


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